デジタル一眼カメラには「イメージセンサー」と呼ばれるカメラの心臓ともいえる重要な部品があります。このイメージセンサーにはその大きさ(センサーサイズ)によって色々な違いやメリットデメリットがあるのですが、新しくカメラを買おうとする時に、どのセンサーサイズを選べば良いのか最初はよくわからないかもしれません。それで今回はこの「センサーサイズ」の種類やその違い、それぞれのメリットデメリットについて、実際にそれぞれのカメラを使ってわかりやすく解説したいと思います。
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ミラーレス一眼の選び方 初心者がチェックするポイントはここ!
ミラーレス一眼を買おうと思っても機種が多すぎてどれを選んだらわからない!自分に合ったミラーレスを選ぶポイントを、初心者にもわかりやすく説明します。これからミラーレスを買おうと思っている人、ミラーレスのことを詳しく知りたい人は是非ご覧ください。
結論:画質で選ぶなら「フルサイズ」、価格面や扱いやすさ重視なら「APS-C」や「マイクロフォーサーズ」を選ぼう!

現在主流のセンサーサイズは大きく分けて3種類ある
昔フィルムカメラが主流だったころはレンズを通ってきた景色はそのままフィルムに焼き付けられていました。時代は流れてカメラはデジタルカメラとなり、フイルムは無くなりイメージセンサーに置き換えられました。そのイメージセンサーの主な役割は、レンズを通して見える景色をデジタル信号に変換してスマホやPCで扱えるようにすることです。
現在ミラーレス一眼で主流になっているセンサーサイズは「フルサイズ」、「APS-C」そして「マイクロフォーサーズ」の三種類です。それぞれ特徴があって、メーカーはその機種の性格にあったセンサーサイズをチョイスしていますので、カメラを買う人は自分が求める性能や特徴にあったカメラを選ぶために、まずこのセンサーサイズについてよく理解しておいた方が良いでしょう。
フルサイズ

プロ機にもよく使われる「フルサイズ」。とにかく画質優先
デジタル一眼を使っている人なら一度は聞いたことがある憧れの単語ではないでしょうか。ちなみに「35ミリ」「フルフレーム」とも呼ばれますが同じ意味です。これは搭載されている画像センサーの大きさが、昔の35ミリフィルムと同じ大きさの「36mm×24mm」のカメラの事です。
昔の話ですがデジタル一眼が生まれた頃、フィルム一眼で使われていたレンズをそのままデジタル一眼でも使えるようにするため「35ミリフィルム」の規格が流用されました。それでその規格枠いっぱいの35ミリフィルムと同じ大きさのセンサーサイズのことを「フルサイズ」と呼ぶようになりました(諸説あり?)
主に中級機以上のカメラに搭載されることが多く、高画質を誇ります。しかし同時に大きく重くなりがちで、レンズを含めた重量はかなりのものになります。価格面でもほとんどが中上級者向けであるので、初心者が手を出しにくい高価な製品が主流となっています。
APS-C

入門機にちょうど良い「APS-C」。中級機にも使われている
恐らく一番デジタル一眼で普及しているセンサーサイズがこの「APS-C(エーピーエスシーと読みます)」ではないでしょうか。フルサイズセンサーより一回り小さい「約23.6mm×15.8mm」のセンサーを搭載したデジタルカメラです。
これまた昔の話ですがデジタル一眼がまだ出始めの頃、35ミリのフルサイズセンサーを商品として量産するのががまだ難しかったので、代わりに一回り小さいこのAPS-Cサイズを採用するカメラが多くありました。フルサイズが普及した今でも入門機用として多くのデジタル一眼で採用されています。
性能としてはフルサイズに次ぐ高画質で、とてもバランスが良いと言えます。各メーカー入門機から中級機まで豊富なラインアップがあって選択肢が多いの魅力でしょう。
マイクロフォーサーズ

「マイクロフォーサーズ」ならボディが小型化できる
少し変わったセンサーサイズがこの「マイクロフォーサーズ」です。これはオリンパスとパナソニックが共同で開発した規格で「約17.3mm×13.00mm」というAPS-Cよりさらに一回り小さいサイズのセンサーです。ほかのセンサーサイズは各メーカーが独自に開発採用しているのに対して、このマイクロフォーサーズは規格を開発したオリンパスとパナソニックが共有しており、二社の間にはレンズの互換性があります。簡単に言うと、パナソニックのレンズをオリンパスのボディで使うことができ、逆にオリンパスのレンズをパナソニックのボディで使うことができます。これはカメラの世界ではかなり珍しいことです。
この「マイクロフォーサーズ」は2020年現在のミラーレス一眼では最も小さいセンサーサイズですが、それでもスマホやコンデジのセンサーよりはかなり大きい面積を持っています。画質はAPS-Cとほとんど遜色なく、しかもAPS-Cの機種よりもさらに小型コンパクトな機種がオリンパスとパナソニックから販売されています。
その他
「NIKKON 1」惜しまれつつも製造終了
過去には「NIKON 1」や「PENTAX Q」といった、マイクロフォーサーズよりもさらに小さいセンサーサイズを持ったミラーレスのシリーズが販売されていましたが、2020年現在それらは全て製造終了扱いになっています。また「中判」というフルサイズよりもさらに大きいイメージセンサーをもつミラーレス一眼も存在しますが、到底初心者が持つようなものではないので、この記事では割愛させていただきます。
センサーサイズが違うと何が変わる?
では次にセンサーサイズが違えば何が変わるのか、具体的に見てみましょう。
画質が変わる

仮に二つのセンサーの画素数が同じであれば、面積が大きい程画素一つの面積も大きく沢山光が当たるので取り込める情報量も多くなります。情報量が豊富であれば、それだけ色の微妙な明暗や濃淡やなどを再現でき、諧調豊かな写真に仕上げることができます。また二つのセンサーの画素の大きさが同じならセンサーの面積が大きい方が画素数が多く高解像度となります。ただ実際には、フルサイズとマイクロフォーサーズの間には圧倒的な画質の差がある、という訳ではなく特に日中の昼間といった恵まれた条件下での比較であれば、その差は見分けがつかない程度でしかないこともよくあります。
写る範囲が変わる

センサーが小さいと写る範囲も狭くなる
少し難しい話になりますが、同じ焦点距離のレンズを使用した場合、センサーサイズが小さいほど写る範囲が狭くなります(望遠になる)。これはセンサーが小さい分受け止める面積が小さいので起きることで、同じ焦点距離のレンズならセンサーサイズが小さいカメラほど望遠レンズ扱いになる、ということになります。
実写比較


同じレンズなのにAPS-Cの方が望遠になっている
一例として上の画像を見て下さい。これはキヤノンのフルサイズカメラ(EOS-R)とAPS-Cカメラ(Kiss M)にそれぞれ焦点距離50mmのレンズをつけて撮った画像です、APS-Cの方が望遠になっていますよね?つまり同じレンズでも、ボディによって写る範囲が変わることがあるということです。
よく「50mmレンズは標準レンズの王道」と言われますが、50mmレンズをAPS-Cのボディに着けた場合、標準ではなく75~80ミリ相当の中望遠のレンズとなるので注意が必要です。
逆にAPS-Cのカメラで50mmの画角(写る範囲)が欲しい場合は、30~35mmのレンズを選ぶ必要があります。(35mm × 1.5倍 = 52.5mm)
レンズのカタログにはどれくらいの範囲が写るレンズかわかるように、どのセンサーサイズのレンズであっても、「焦点距離50mm(35mm換算80mm)」のように実際に写る範囲をフルサイズセンサーを基準に換算して記載するのがルールになっています。ちなみに換算式はAPS-Cは1.5倍(キヤノンは1.6倍)、マイクロフォーサーズは2倍になります。
ボケの量が変わる



センサーサイズが小さいほどボケにくくなる
(フルサイズ >>> APS-C > マイクロフォーサーズ)
まず上の画像を見てください。これは同じ場所から同じ大きさになるように3つのカメラで撮った写真ですが、センサーサイズによって後ろのボケ方が違うのがお分かりでしょうか?(APS-Cとマイクロフォーサーズの違いはわずかですが)理由は省略しますが、同じ距離から同じ範囲を写した場合、大きいセンサーサイズの方がボケ量が多くなります。
この特徴を生かして、背景のボケを多用するポートレート撮影などにはフルサイズセンサーのカメラが好んで用いられます。逆に海外のカメラマンが撮るスナップのような画面全体にピントが合っている作風を好むなら、あえてボケにくいマイクロフォーサーズやコンデジを使うのもアリです。ちなみにストリートスナップで世界的に有名なプロカメラマンの森山大道は、リコーのGRというAPS-Cセンサーのコンデジで作品を撮っているのは有名な話です。なんでも高ければ良いという訳ではないということですね。
高感度ノイズの量が変わる




同じ感度なのにノイズの乗り方はこれだけ違う
まずは高感度撮影した上の画像のザラつき方を比較してみて下さい。APS-Cとマイクロフォーサーズはほぼ互角に見えますが、画素数がE-M10MarkIIIの1600万に対してKISS Mは2400万なので、実質はAPS-CであるKiss Mが健闘しています。それに対してフルサイズのEOS Rの滑らかさが頭一つ抜けているのがわかると思います。
これはセンサーの面積に関係するのですが、一画素あたりの面積が大きい程わずかな光でも多く取り込めるため、センサーサイズが大きい方が暗い所の撮影でノイズが出にくいという特徴があります。一般的に暗い所で三脚を使わずに手持ちで撮影するにはISO感度を上げて撮影しますが、センサーサイズが大きければISO感度を高めに設定してもノイズが少ない滑らかな写真を撮ることができます。
本体の大きさも変わる

センサーサイズが違うだけでこれだけ違う
当然と言えば当然のことですが、大きいセンサーを搭載するためにはボディも大きくする必要があります。またボディだけでなくレンズも大きいセンサーに合わせるために大きく重くなります。一般的にフルサイズセンサーを搭載したフルサイズ一眼が高画質で人気がありますが、自分の体力や用途を考えて、プロでもあえてAPS-Cやマイクロフォーサーズの機種を採用するというケースもあるようです。
価格
2020年春 主要ミラーレス一眼参考価格表(ボディ単体、大手量販店ネット価格)

価格はセンサーサイズに完全に比較するわけではない
センサーサイズが異なると、ボディやレンズの価格も変わってきます。一般的にはセンサーサイズが大きい「フルサイズ一眼」がより上位機種となり高価となります。しかし表を見ればわかるように最近ではフルサイズセンサーを搭載した入門機やマイクロフォーサーズを搭載したプロ向け機なども登場しているので、一概に「センサーサイズが大きいほど高級で高い」という訳ではありません。
注意:センサーサイズが変わると使えるレンズも変わる

買い替えの時はレンズの互換性に注意
ここで注意点を一つ。小さいセンサーサイズのカメラから大きいセンサーサイズのカメラにアップグレードする場合、レンズも同時に全て丸ごと買い替える必要があります。なぜなら、2020年現在キャノンのミラーレス一眼はAPS-Cとフルサイズは物理的に互換性がありませんし、ソニーαシリーズやニコンZシリーズは互換性はありますが、フルサイズボディにAPS-C用レンズを装着すると「クロップ」といって画素数が大幅にダウンするので性能を生かし切ることができないからです。ちなみにマイクロフォーサーズは他のセンサーサイズとレンズの互換性は全くありません。今ある程度レンズを揃えている人がボディを買い替える場合はその点も注意しましょう。
まとめ:センサーサイズは大は小を兼ねない。自分に合ったセンサーサイズのカメラを選ぼう

これから始める人はなるべく持ち出しやすいカメラを選ぼう
センサーサイズ比較いかがだったでしょうか?
確かにセンサーサイズは大きければ大きいほど高性能となるので、あくまでも写りを最優先にするならフルサイズカメラはベストの選択肢となるでしょう。しかしその分大きく重くなり、レンズまで含めれば値段もかなり高価となりますので、旅行やお散歩に気軽に持ち出すのは難しくなります。対してマイクロフォーサーズは小型軽量で、しかもレンズも含めてとても手ごろな価格なものが多くあります。APS-Cはその中間で、フルサイズに近い性能を持ちながらよりコンパクトです。
実はプロカメラマンや本格的にカメラを趣味にしている人であっても、フルサイズだけでなく用途に応じて複数のセンサーサイズの機種を使い分けている人が多くいます。ですから当サイトの結論としては、これからカメラを始める方は「まずAPS-Cかマイクロフォーサーズの機種から始めて、ある程度腕を磨いてからフルサイズ機にステップアップする」のが当サイトのおすすめとします。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
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