「やっぱりいつかはフルサイズ」、「ちょっとでも画質がいいものが良い」、「どうせ買うなら最初から良いやつで」よく聞く意見ですね。
でもそんな中「もうフルサイズはいらない」と考えて、今敢えてフルサイズ一眼を手放してAPS-C機に買い直す人も少なからずいるそうです。
画質第一主義のフルサイズよりも、サイズや重量と写りのバランスの取れたAPS-C機の方が魅力がある、と言うわけですが、本当にそうなのでしょうか?
この記事では主にキヤノンのフルサイズ機と最新APS-C機を比較して、本当にもうフルサイズはいらないのか?APS-C機はフルサイズに追いついたのか?実際に比較しながら検証したいと思います。
今回は主にEOS R5、EOS RP、EOS R10、EOS Kiss M2の4機種で検証してみました
尚、この記事での検証はある程度正確だとは思いますが、あくまで個人が趣味の範囲で検証したもので、結果について責任を負うものではないことをご了承願います。
結論:もうフルサイズはいらない、かどうかはその人次第
正直自分も今までは「絶対にフルサイズじゃないとダメ」と思って専らキャノンのフルサイズ機(今はEOS R5)を使っていたのが、EOS R10を買ってからは趣味の撮影はほぼEOS R10を使うようになりました。
使っていて思うのですが最近のAPS-Cの画質の向上は本当に目を見張るものがあります。撮影条件が良ければフルサイズとAPS-Cの写真を見分けられる自信は自分にはありません。
なので高い金額や大きさ、重さに嫌気が差し「これならもうフルサイズじゃなくていいか」と思う人が増えているという話にも納得です。
これから実際に比較しますが、最近のAPS-Cセンサーのカメラはフルサイズに迫る高性能なのでびっくりしますよ
ただ、暗い所でISO感度を高めにしないといけない時など、まだフルサイズが有利な場面が無い訳ではありませんし、フルサイズカメラに対して「高級機としての魅力」を感じる人もいるでしょう。
なので、必ずしもフルサイズ不要という訳ではなく、その人の用途、予算、目的などによってフルサイズにすべきか、またAPS-C機の方がよいのか、見極める必要がありそうです。
本当にフルサイズはいらないのか?フルサイズとAPS-Cの性能を比較
では論より証拠、ということで、早速フルサイズカメラとAPS-Cセンサーのカメラで実験し、画質を比較してみましょう。
まずはフルサイズとAPS-Cの違いをおさらい
そもそも「フルサイズ」って何でしょうか?フルサイズとは一眼カメラのセンサーの大きさの事で、昔の35mmフィルムと同じサイズのセンサーの呼び名です。
デジタル一眼レフカメラが登場した頃は大きなセンサーを作るのはコストがかかり、普及帯のカメラにはもっと小さなセンサー(APS-Cなど)を積むのが普通でしたが、その場合でもレンズ規格は35mmフィルムの規格をそのまま流用していました。
つまりベースとなる規格が35mmフィルムサイズだったので、その規格の本来のサイズ、ということで35mmフィルムサイズがフルサイズと呼ばれるようになりました。
デジタル一眼が登場した時はAPS-Cしかありませんでしたが、フィルム一眼からの移行のしやすさを考えて、レンズ規格は敢えて35mmフィルムのままにして互換性を持たせたんでしょうね
フルサイズのメリット
よく言われるフルサイズのメリットの一番は画質です。よくフルサイズは空気まで写すと言われますが、センサーが大きい分たくさんの情報を集めることができるので、画質の面では有利といえます。
他には高感度に強いという点を挙げることもできるでしょう。これもセンサーの大きさに関係しますが、面積が大きい=1画素あたりに当たる光の量が多い、ということで暗い場面でも有利です。
さらにフルサイズはAPS-Cセンサー搭載機などに対してボケの量が大きくなるので、ポートレートなどボケを重視する人にはこれも大きなメリットと考えられています。
APS-Cのメリット
一方でAPS-Cのメリットとしてはやはりフルサイズと比べて大幅に軽量でコンパクトであることが挙げられます。
センサーのサイズが小さい分レンズも小型化することができますので、システム全体で比較すれば誰にでもはっきりと体感できるぐらいの相当な違いとなります。
さらにコストダウンが効いた部品を使うことで、フルサイズに比べれば買いやすい値段に抑えられているのも大きなメリットだといえるでしょう。
フルサイズとAPS-Cを比較:明るい所での画質
ではまずフルサイズとAPS-Cのカメラの明るい所で比較してみましょう。
この二枚、一方がフルサイズのEOS RPで、もう一方はAPS-Cのエントリー機であるEOS Kiss M2で撮っています。見比べて違いがわかりますか?
確かに色味などは違いますが、どっちが綺麗、どっちがいい、と言う感じでもないと思いませんか?
色は結構違うけど、どっちが綺麗かと言われたら・・・好みかなぁ
正直な所明るい所でのこんな感じのスナップだと、最新モデルでなくてもフルサイズと差が付くことはまずないでしょう。
これはセンサーサイズと言うより、ミドルクラスとエントリークラスの味付けの違いでしょうね。エントリークラスの方が鮮やかな色合いに写ることが多いようです
ちなみに、作例は下がEOS Kiss M2で上がEOS RPでした。
フルサイズとAPS-Cを比較:高感度(暗い所)での画質
では次に暗い所でのフルサイズとAPS-Cの画質を比較してみましょう。まずはISO感度12800で比較してみます。
今度はEOS Kiss M2とEOS RPに加えてハイアマチュア向けフルサイズのEOS R5と、最新のAPS-C機であるEOS R10も加えて比較してみます。
ちなみに今回は純粋にセンサーサイズの違いによるのノイズの比較をしたいので、画像エンジンによるノイズリダクション(ノイズ軽減)はオフに設定してます。
どうでしょうか?流石にエントリーモデルのEOS Kiss M2は粗さが目立ちますね。
ですが、同じAPS-C機でも最新のEOS R10はフルサイズのEOS RPより劣ってはいますが、かなりその差は近づいているような印象です。
個人的には、以前のようにAPS-C機は高感度ではフルサイズと比較にならない、という程ではなく、被写体や鑑賞する媒体(SNS用やネット記事用など)によってはISO12800でもなんとか使えそうです。
では次はもう1段上げてISO25600で比較してみましょう。
どうでしょうか、ISO25600はさすがにはっきりと違いますね。見ての通りISOが25600を超えるような超高感度撮影では、フルサイズのアドバンテージは割とはっきりとしています。
APS-C最新モデルのEOS R10は発売から2年以上経つEOS Kiss M2と比べれば隔世の違いを感じさせますが、それでも発売から3年が経過しているとはいえフルサイズのEOS RPに全く及びません。
3年前の発売なのに最新モデルに勝っちゃうなんて、やっぱりフルサイズは綺麗なんだね
そう見えるかもしれませんが、これはISO25600というかなり極端な条件で、さらにPCなどの大きな画面で評価したらとそうなるという話です。普通はISO25600なんて使いませんよ
逆に言えば、SNSの投稿やスマホでの鑑賞がメインであり、ISOも上げても12800程度までであるなら、今までフルサイズ一択と言われていた高感度の撮影でも、最新のAPS-C機であればある程度使えるのではないでしょうか。
大判の印刷や大画面での鑑賞をする人がどれほどいるかですね。スマホやタブレットでの鑑賞だけなら、もうフルサイズほどの画質は不要だと考えるのは確かに合理的なのかもしれません
フルサイズとAPS-Cを比較:RAW現像耐性
続いてRAWファイルを比較してみましょう。
RAWファイルとは・・・
一般的にスマホやPCで扱われる画像ファイルである「JPG(ジェイペグと読みます)」は実用性を考えてかなり圧縮されており、目に見えない微細な情報は削除されています。
一方でRAWファイルとは、カメラのイメージセンサーで得た情報を全て含んでおりその分ファイルサイズは巨大ですが、JPGでは削除されてしまった情報を復元することも可能なので、大幅なレタッチなどに適しています。
ちなみにこの作業の事を「RAW現像」と呼びます。
一般的にフルサイズセンサーの方が面積が大きいので、APS-Cよりもリッチな画像情報が含まれていると言われています。
今回はRAW画像をわざとアンダー露出で撮影し、そこからPCのRAW現像で明るさを調整しどこまでリカバリーできるか挑戦します。
使用する機種はフルサイズがEOS R5とEOS RP、APS-CがEOS R10とEOS Kiss M2です。
わざとこんな感じで暗く写った写真をRAW現像で無理やり明るく調整してみます。フルサイズはやっぱり失敗からのリカバリーに強いのか気になりますね
ではどの程度までリカバリーできるのか、フルサイズとAPS-Cでは違いがあるのか、見てみましょう。
すごい!RAWって真っ暗な写真でもここまで明るくできるんだね
確かに明るくはなりましたが、使えるかどうかは別の問題ですよ。画質が破綻していないか詳細に比較しましょう
LightRoom Classicにて露出を+5段することで通常の明るさになりました。EOS Kiss M2なんかはもっとめちゃくちゃに破綻するかと思いましたが、意外にもそれなりに粘っているのが驚きです。
ただ、それよりも驚いたのが、明らかに最新のAPS-C機であるEOS R10の方がフルサイズであるEOS RPよりもノイズが少ない、という点です。
ほんとだ!EOS RPはフルサイズなのにAPS-CのEOS R10に完全に負けちゃってるね
実はEOS RPのフルサイズセンサーはそこまで新しい設計のものではなく、2017年発売の一眼レフEOS 6D MarkIIと似たような性能のものではないか?と言われています。
つまり恐らくですが、RAW現像耐性はセンサーサイズにではなくセンサーの世代に依存しているのではないかと思います。
EOS R10で使われているAPS-Cセンサーがどの程度新設計なのかはわかりませんが、少なくともRAW現像耐性に関しては、フルサイズのEOS RPを凌ぐ性能を持っていると考えて良さそうです。
実は一眼レフの時代はキヤノンのフルサイズセンサーはダイナミックレンジがあまり広く無かったので、EOS RPはその時代のセンサーがベースだとしたらこの結果は頷けます
フルサイズとAPS-Cを比較:ボケやすさ
次にこれもよく言われるボケやすさを比較してみましょう。
同じ焦点距離のレンズを使っても、センサーサイズが大きくなればなるほどボケは大きくなります。
ではその差はどのぐらいなのでしょうか、見てみましょう。
どうでしょうか?どちらがフルサイズでどちらがAPS-Cでの撮影かわかりますか?ヒントはボケの大きさです。
大きく違う、と感じる人もいれば、このぐらいの違いしかないのか、と感じる人もいるかもしれません。
言われたらわかるけどぱっと見はわからないね
奥に行けば行くほど、上の写真の方がよりボケているのがわかると思います。ボケは一眼カメラの魅力の一つなので、確かにボケの大きさは重要です。
ですが、ボケはセンサーサイズだけでなくレンズの明るさ(F値)も関係しますので、APS-CセンサーでもレンズをAPS-C用の小型で明るい単焦点レンズを使うなどすれば、このボケの大きさの差は解消することも可能でしょう。
APS-C専用レンズはフルサイズ対応レンズよりも小型で価格も抑えられているものが多いので、実用重視の人にはぴったりだと思います
フルサイズはいらないのはどんな人?
フルサイズとAPS-Cカメラの性能の違いが大体わかったところで、ここからはフルサイズはいらない、と言える人はどんな人なのか考察していきたいと思います。
なるべく費用を抑えたい初心者
これは言うまでもないかもしれませんが、もしこれから本格的なミラーレス一眼を買う人で、なるべく費用をかけたくない、と言う人はフルサイズ一眼は避けた方が無難です。
下の方で詳しく書きますが、フルサイズ一眼は対応するレンズなども高価なものが多いので、全般的に費用は高くなりがちです。
ちょっといい機種が気になる気持ちはよくわかりますが、費用をあまりかけられないなら、後々の事を考えれば素直にAPS-Cなどの機種にしておいた方が良いでしょう。
スペックや僅かな画質の違いより実用面重視の人
もし、カメラ機材そのものに魅力を感じる訳でなく、あくまでも撮れる写真の方を重視する人もフルサイズである必要はないかもしれません。
比較した通り最近ではAPS-C機の画質もかなり上がっているので、かなり厳しい状況でないとその差はほとんどわからない所にまできています。
自分が撮る写真のジャンルで画質に違いがあまりないのであれば、フルサイズに比べて安価で、小型軽量なAPS-C機の方が実用性が高い、と判断するのは当然だと思います。
なるべく機材は軽い方がいいと思う人
例えばハイキングや山登り用、また日常のお散歩用などの場合は、あまりに大きくて本格的な機材は向いていないでしょう。
もちろんフルサイズ一眼の方が画質面で有利ではありますが、それ以上に登山やお散歩用では軽量でコンパクトであることが優先されるはずです。
カメラはそもそも持ち出さなければ意味がないので、無理せずに持ち出せるサイズと重さかどうか、よく確認するようにしましょう。
野鳥、飛行機、電車、サーキットその他スポーツカメラマン
実はAPS-C機は全ての面でフルサイズに劣っているという訳ではなく、特に超望遠域での撮影やスポーツ撮影などでは、場合によってはフルサイズ一眼より高性能です。
具体的には連写性能が優れていたり、同じレンズを使ってもフルサイズ一眼よりAPS-C機の方がより望遠になる、という特徴があります。
この特徴を生かして、特に野鳥や飛行機、スタジアムなどのスポーツ撮影をする場合、フルサイズ一眼ではなく、敢えてAPS-C機を選ぶのが良いでしょう。
フルサイズにした方がいいのはどんな人?
では今度は反対に、APS-Cとフルサイズの性能差が僅かだとしても、それでもフルサイズを買うのをおすすめしたい人はどんな人か、考えてみましょう。
失敗が許されない撮影をする人
職業として写真をとるプロカメラマンはもちろん、結婚式や入学式や卒業式といった、撮れなかったでは済まされない、失敗ができない撮影をする人はフルサイズを選ぶでしょう。
理由はシンプルで、フルサイズの方が高感度に強いので、その分シャッタースピードを稼いでブレを抑えられるといったマージンが取れるからです。
さらにプロユースに耐えるような高級カメラは、やはりフルサイズが多い、と言う点も挙げられるかもしれません。
撮影が成功するための努力と準備、そして費用をを惜しまない、そんな人は当然カメラもフルサイズを選ぶはずです。
僅かな画質にもこだわりたい人
その差は少なくなったとはいえ、薄暗い所や夜間の撮影など、フルサイズの方が画質の面で有利な状況はもちろんあります。
たとえ言われないとわからない位の違いでも、自分がそこにこだわりたいのであればそれは他人にとやかく言われるようなことではありません。
画質面で自分が満足するためにちょっとでもいいカメラが欲しい、というのは当然のことだと思います。
カメラが好きな人、スペック重視の人
もちろんカメラは写真を撮るためのものですが、中には「カメラそのものが好きだ」という人もいます。もし自分にその気があると感じるなら、是非予算の許す範囲で「いいカメラ」を手に入れましょう。
「撮れもしないのにそんな高い機材を持って」などという声を気にする必要は一切ありません。それを言うならポルシェやフェラーリはレーサーしか乗ってはいけないことになります。
他の人から見て「金額に見合っていると思えるような写真が撮れるか」は関係ありません。初心者でも「安い機種で始めないといけない」というルールもありません。自分が持っていて喜びを感じるカメラを手に入れましょう。
まとめ:結局のところ欲しいカメラを買うのが一番
いかがだったでしょうか?最近のAPS-Cであれば多くの人が満足できる写真を撮ることが可能だと思います。
一方でやはりギリギリの性能が必要になるプロやそれに準ずる人であれば、もちろんフルサイズを選んだ方が有利であるのは間違いありません。
いずれにしても言えるのは、APS-Cとフルサイズの差は以前よりは少なくなっており、実用面だけでいえばAPS-Cカメラで十分だと感じる人がこれからも増えていくと思います。
フルサイズカメラは今以上に、プロ専用機と趣味性が高い機種にシフトしていくのかもしれません。
この記事が皆さんの参考になれば嬉しく思います。最後まで読んで下さってありがとうございました。
↓↓各社エントリークラスミラーレス一眼のレビュー記事アリマス。よければトップページから見て行ってください。↓↓
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